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関連するリスク

体外受精を受けられた場合のリスクについては、患者さまにとって大変な関心事のことでしょう。そこで、体外受精での代表的なのリスクについてご説明したいと思いますが、次にあげることは決して多くの方に起こるわけではなく、発生頻度は非常に低いこととお捉えください。

[1] 採卵時のリスク

採卵は、超音波診断装置を用いて、針を卵巣に穿刺し、卵胞内の卵胞液を吸引します。通常は、安全性を重視して実施しますので、副作用は発生しませんが、ごくまれに腸や膀胱の損傷、卵巣からの出血、骨盤内の感染が発生する可能性があります。これまで、当院では、このような事例は1例も発生しておりません。また、採卵に際しては、痛みを伴わないように麻酔薬(静脈麻酔)を使用します。麻酔薬は、安全性の高い薬ですが、呼吸抑制、呼吸停止、低酸素症、突発性の不整脈などが発生する可能性もあります。卵巣の位置が腸管や大血管の裏側にある場合など、位置によっては卵巣を穿刺できない場合もあります。

[2] 一般体外受精治療成績と出生児の先天異常

日本産科婦人科学会の調査結果によると、平成27年度に日本で実施された新鮮胚を移植した一般体外受精法の治療周期数は、89,780周期で、そのうち出生児数は4,577人でした。出生児の中で先天異常や染色体異常が確認されたのは115人(2.5%)です。

※日本産科婦人科学会 倫理委員会 登録・調査小委員会-2017年分より引用

海外の調査においても、出生児に異常を認める割合は、0.5~4%と報告されています。この数値は、自然妊娠での割合とほとんど変わりません。一般体外受精や胚移植法を行うことにより、先天異常の割合が高くなるという結果ではありませんでした。

[3] 顕微授精法に伴う胎児奇形および遺伝的リスク

顕微授精法によって出生した児の先天異常や染色体異常が確認されたのは、1.7~4%と報告されており、一般体外受精法治療時の発生率と同程度となっています。日本産科婦人科学会の調査結果によると、平成27年度に日本で実施された射出精子を用いた顕微授精法の治療周は、130,132周期で、そのうち出生児数は4,432人でした。出生児の中で先天異常や染色体異常が確認されたのは、142人(3.2%)です。

※日本産科婦人科学会 倫理委員会 登録・調査小委員会-2017年分より引用

無精子症や重症の乏精子症の患者さまの場合では、精子形成関連遺伝子(AZF)の異常(3~10%)が造精機能障害の原因となっている場合があるとされています。このような場合に、顕微授精法の治療によって出生した児が男児の場合はAZFの異常を引き継ぐことになります。

[4] 流産について

自然妊娠の場合、流産する割合は10~15%といわれています。統計上、体外受精はやや流産率が高くなるといわれ、日本産科婦人科学会の調査結果によると、そのうちの約20%程度が流産となっています。

[5] 多胎妊娠

多胎妊娠とは、双子以上の妊娠を総称していいます。近年、不妊症治療による多胎妊娠が問題となっています。多胎妊娠は、母体にも胎児にもリスクが高くなります。切迫早産による母子センターへの搬送や早産児管理のため新生児センターへの入院、母体が妊娠高血圧症候群になる可能性も高くなります。これを問題視した不妊治療専門医の団体である日本生殖医学会は、2007年3月に母子への危険が大きい多胎妊娠を減らすため、体外受精の際に子宮へ移植する受精卵(胚)の数を「35歳未満の患者に対する初回の移植では1個に制限する」という内容の指針を決定しました。
日本産科婦人科学会は、1996年に体外受精の際に移植する受精卵は3個以内とする指針を決定しましたが、多胎妊娠が増加傾向にあるのが現状でした。日本産科婦人科学会も従来の指針の見直しに着手し、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2個胚移植を許容すると見解を改めました。移植する受精卵を減らすのは世界的な流れで、とくにヨーロッパでは、積極的に1個胚移植が行われています。
当院では原則、胚移植数は1個に制限しています。妊娠率も低下させず、多胎のリスクを減らせると考えています。ただし、一卵性双胎はありえますので100%多胎にならないという訳ではありません。

[6] 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

体外受精法を行う場合には、卵巣刺激法を用いて卵胞を多数発育させて採卵を行います。この副作用として卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症することがまれにあります。発症すると卵巣が大きく腫大し、腹水貯留(腹に水が貯まる)や胸水貯留(胸に水が貯まる)が起き、腹痛や呼吸困難などの症状が出現します。腹水は、血液中の水分がお腹に漏れ出て貯まったもので、尿が出なくなったり、体重が増加したりします。その分血液中の水分が少なくなり、血液濃縮が起こると血栓ができやすくなりますので、重症例は入院治療が必要となります。また、これも非常にまれにですが、腫大した卵巣が捻転(ねじれ)を起こし(卵巣茎捻転)、手術が必要となることもあります。
採卵後は、腹部の状態を観察しますが、お腹の張りがひどくなる、歩いていてひびく等の症状が現れた場合は必ず受診が必要です。

発症する可能性が高いのは次のような方です。
多嚢胞性卵巣症例
35歳才以下の若年者
血中エストロゲン値が4,000pg/ml以上の症例
多数の卵胞発育症例
GnRHアゴニスト使用症例
妊娠成立症例(重症化することが多い)

このような例では移植可能な受精卵(胚)をすべて凍結保存します。そして、症状が治まってから融解して胚移植します。回避するために刺激方法の工夫や防止する薬剤の投与により、入院が必要となるような重症例は当院ではほとんどありません。

[7] 異所性妊娠

通常の体外受精法では受精卵(胚)を子宮腔内に移植します。ところが、子宮と卵管はつながっているため子宮内に移植した胚が卵管内へ移動することもあります。卵管内に移動した胚は再び子宮内へ移動して子宮に着床しますが、卵管内で留まって着床した場合には異所性妊娠となります。異所性妊娠の発生頻度は約3%と報告されており、どんなに工夫をしても100%予防することは困難です。
当院では、院内ホルモン検査にて迅速に血中の妊娠反応レベル(血中HCG)を測定し、異所性妊娠の早期発見・早期対応を行っています。